初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
「駅までちょっと歩くけど」
「ん……」
まっすぐに前を見て、持ってる限りの平衡感覚を出すべく集中する。またよろけたりしたら……
「タクシーっても、駅にいかないとつかまんないよな」
「大丈夫って。ほらちゃんと歩けてる」
どうも最近、相良さんと居るとお酒を飲み過ぎるような気がする。
楽しいからのか、安心して気が緩むのかよくわからない。
今度はきちんと歩けてたんだろうか、背中を支える手が離れて行った。それはちょっと寂しいなんて思ってると、今度は私の前にきて、
「じゃあ、はい」
初めて見た時に大きな手だなぁと思ったそれが差し出されている。
先輩が掴んだ手を離してくれたのもこの手だった。
温かくて、優しくて、包みこんでくれるようなその大きな手。
「てか、このままじゃ引っ込みがつかないんだけど」
「え?」
「ほら、ゆっくり歩こう」
そう言ってから私の手を取って歩き出した。
手、繋いでる。相良さんと。フワフワしてたのに、それが一気にしゃんとしそう。
まっすぐ歩けてるかとかそういう事さえも考えられなくて、意識は全部そこに集中する。
「まんまとアイツに唆されたなぁ、ったく」
なんか言ってる相良さんの言葉の意味も耳を通って抜けていった。