初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
「ん?どうした?」って優しく問いかけてくれる相良さん。
だからそういうのって困る。
「な、なんでもない」
あぁもうなんていうか、私ってダメダメ。
友達としか思われてないってわかったはずなのに。それなのに、その友達から抜け出たいなんて思ってる自分をまたも再確認してる。何かする勇気もないくせに。
自分から好意を抱いたのは久しぶりで。それこそ、中学以来なんじゃないかと思う。
いつも受け身だったから、どうしたらいいかわからない。28まで人並みに恋愛してきたつもりでも経験値は全くあがってなかった事が今更ながら悔やまれる。
長いエスカレーターを降りて改札に向かう。
すぐ後ろには相良さん。
これじゃ中学時代、道路の向こうを歩く坂下くんに話しかけられずに踏み出せなかった頃と変わらない。ほんと、なにやってんだろ私。
改札を出てすぐ、相良さんの存在を確認しようと振り向こうとしていたその時―――、
後ろからしっかりと掴まれた手。大きくて温かいその手。
見上げると「ゆっくり帰ろ」と優しい声で言う相良さん。
もう酔ってない。ていうか冷めた。
あーまたっ、その手から全身に熱が伝わってくる。
もう駄目だ。
―――相良さんが、好き。