初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
最初の一歩
ゆっくり、そう言ったようにレストランから出た時のように歩く。

もう酔ってないけど普通に歩いて帰ったら10分とかからない。もう少し、あと少し、そう思うと自然と歩みも遅くなる。

「具合、どう?」

「ん、大丈夫。」

これはお酒の事だとわかってる。むしろ大丈夫じゃないのはココ。

空いている方の手をそっと胸に当てる。ドキドキしてる。コートの上からでもその動悸が伝わってくる。
うわーこの音、隣にいる相良さんに聞こえなきゃいいけど。そう思いながらキュッと胸を抑えていると、

「寒い?」

不意に心配そうな声が聞こえてきた。

今胸元をキュッと握ったから寒いと思ったのかな?
いや、むしろ暑い。だって繋がれた手から熱が伝わってくるから。

「ん、平気」

「そ、良かった」

そう言って繋がれた手を少しだけキュッと握りなおされたような気がした。

え?顔をあげて相良さんを見ると「ん、こうしてると寒くないな」ちょっと照れながら言う相良さんにまた胸が高鳴るのを感じた。

「あーもう、なんつうか、あれだな」

「ん?」

あれ?って?相良さん、今日こういう言い方が多くてさっぱり分からない。
いつもストレートに言葉にする相良さんなのに、今日はやっぱりなんか変。
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