初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
「はい、どうぞ」
鍵を開けたあと、ドアを押さえるために手を離された。
部屋の中は冷たい空気で満たされていた。この時期家に帰ると寂しい気持ちになるのはこの寒い気温のせいかもしれない。
「おじゃま…します……」
なんだろ、コレ。足が震えてる。この部屋に入るのは初めてじゃないのに。
私が靴を脱ぐとそれを待って相良さんも靴を脱いだ。
居住者よりも先に部屋に入るわけにもいかなくて、その場で立っていると。
「寒いよな?少しだけ待ってな。」
相良さんは部屋の暖房をつけてからコートを脱いだ。
私もただ立ってるだけじゃなくてコート脱げば良かったんだなんて。そんな単純な事さえ気づかない私って。
エアコンの暖かい風が部屋の中に流れ込むと静かだった部屋の時間が流れ始めた。
「クルミちゃん、座ってて。ワイン持ってくる」
ソファに座り、コートをたたんで膝の上に置いた。
「あぁごめん、コート預かるよ」
相良さんにそれを渡そうとして手が少しだけ触れる。
ぁ。その温かさにさっきまで繋いでた手の事がまた思い出されて一気に顔に熱が集まった。
ダメダメダメ。さっきと違ってここは明るいんだから。
「あれ?クルミちゃん、そんな寒かった?」
「え?あ……っと、」
「ごめん、なんか羽織るもの持ってくるよ」
そう言って私のコート持ったまま相良さんはリビングから出ていった。
なんか、誤解してくれて助かったような。