初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
「え、っと、あの?」
戸惑う私のグラスも奪うと、それもテーブルに置いた。そして私の方をじっと見つめて、
「乾杯してる場合じゃないから」
いやいや、乾杯って言ったの相良さんだし。それに距離が近い。
10センチもあいてない。私の方を向いているから肩が触れ合う事はないけど、少なくとも手を伸ばせばすぐに届く距離にはいる。
「もう無理なんだよね、こういうの」
そう言って相良さんは目を伏せた。
あ、まつ毛長い。いやいや、そうじゃなくて。こういうのって?
少し酒の残る頭で考えようとするけれど、こういうのに思い当る事がなくて下を向いて目を閉じて考える。何も答えにたどり着くような事もないまま。
「俺、思った事すぐ言うけど、それ我慢してるとこうなる」
と言って膝に置かれていた私の手を捉えた。
「マジでホント困ってる。」
今この場で手を繋がれた事に驚いて顔をあげれば、眉を下げて困った顔をした相良さんが見えた。
捕らえられた私の右手を相良さんの両手がしっかりと包んでる。
「ハァー、情けな……」
いつも快活な相良さんの意外な一面にドキリとする。
何かあったんだろうか、嫌な事でも。
弱ってる?みたいな相良さんは初めてで、自分の鼓動が速くなるのを何とか抑えて私は口を開いた。
「あの、何か私で出来る事があれば……」
そんなことあるのかわからない。だけどいつも元気な相良さんでいて欲しい。