初恋のカケラ【3/13おまけ更新】

『クルミちゃん?』

「あ、おつかれさま」

いつもの相良さんの声。しばらく会えてないけれど、声を聞いているだけでホッとする。

『あーまだ仕事中』

と、少し言いづらそうに言葉が返ってくる。

「え?」

だって今十時過ぎ。そんな遅くに……

『いや、電車あるうちには帰るけど。さすがにその時間になったら遅いから』

どうしても話したかった?って感じ?でもそこまでして話す事って……どうにも悪い予感がして、

「……あーほら、週末には会えるし、無理しないで?」

会えるに越した事はない。だけど、そこまで無理してっていうのもなんか違う気がする。何より相良さんの体が心配だった。

『無理するよ、クルミちゃんに早く会いたいからね』

早く会いたい、その言葉が嬉しくて幸せな余韻に浸っていると、

『週末までなんて無理』

「へ?」

『待てないって言ってんの』

ちょっと拗ねたように言う相良さんがやっぱり可愛くて。

「……うん、私も会いたいな」

素直に言葉にする事が出来る。探る事なく相良さんが本音で向き合ってくれるから。

『ハァー、今電話した事、モーレツに後悔した』

「ど、して?」

『俺、ガンバレ』

今度はそう言うとそれ以上理由は教えてくれなかった。
まだ職場だと言う相良さんと少しだけ話しをして電話を切った。

会えない時も幸せに浸れるってなんだか初めてかもしれない。
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