初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
こんな時間の着信は珍しい。というか、たぶん初めて。
やっぱり仕事が終わらなそうとか遅くなるとかそういう……嫌な予感を押さえつつテーブルに近付きそれを手に取った。

「はい」

『あ、良かった。出てくれて』

「……うん」

ますます悪い方へ思考が傾きかけた時、

『仕事終わったから一緒にご飯出来るかなと思って』

「え?ご飯?」

『あ、もしかしてもう食べたとか?あーそれとも誰かと一緒?』

さっきの弾んだ声とは一段下がって、伺うような感じで聞いてきた相良さん。

「ううん、今家に着いたとこ」

『そっか、さっきイタリアンのマスターに聞いたらいつもの感じでよければ席用意してくれるって言うから』

いつものって言うと、お任せってやつだ。

たしか今日は別メニューを考えてるって言ってたけど特別なんかじゃなくてもいい、一緒にご飯が食べられるなら。ううん、もうすぐ会えるならどこで何を食べようが関係ない。

「そうなんだ。じゃあ、時間見てお店に行くね」

『あーそっか、そうなるよな……』

って、なんかダメだったんだろうか。一旦帰って着替えたいとか?でも平日だしそんな飲み続けるって言っても

「あ、でも。一度、相良さんが帰りたいなら…―」
『や、いいや、そのままでいい』

「?そう?なら時間見てお店に行くね」

『ん。じゃまたあとで』

変な相良さん。
まぁでも、もうすぐ会える。
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