初恋のカケラ【3/13おまけ更新】


「で?どうだったの?結果」

「さぁ、わかんない。告白したってことしか」

「そっかー。そうだよねー」

もう夏休みだし、そんな噂はそのまま新学期に持ち越される事もないだろう。
だからきっと本人に聞かない限り、その結果は知る事はない。


「クルミ、早くいかないと俺が先に場所取るぞ」

「げ、ダメっ。あの場所、さいっこーに涼しいんだからっ。木村には譲れない!」

後ろからやってきた木村が、そんな風に私に声をかけて追い越してく。


私の名前は胡桃澤訓歌(クルミザワ ノリカ)
難しい漢字ではないけど、長いのが面倒なのか名字の途中までのクルミと呼ぶ。
それまでは名前で呼ばれることが多かったけど、今ではクルミと呼ばれることに全く違和感も感じなくなってた。

個人練習の場所は大体は決まってるけど、時には早い者勝ちって所もあるから結構争奪戦。
私みたいに軽い楽器だと移動は簡単だけど、さっき追い越してった木村はユーホニウムって金管楽器。そこまで重いってわけじゃないけど、やっぱりあんまり遠くには移動したくないみたいだ。
だから音楽準備室の外のベランダは大人気。

今日もそこで外のサッカー部の練習を見ながら*ロングトーンなんてのんきに思っていた私はあわてて木村の後を追った。



*ロングトーン 金管楽器や歌唱のトレーニング方法の一。一定の高さの音や声を、できるだけ長くのばして発すること。-国語辞書(大辞泉)
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