初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
「相良さんも実家ですか?」
『いや、親戚の家』
親戚の家で年越しなんて話、そういえばうちの近所でもよく聞く。
相良さんの家はたしか東北だったからそれかもしれない。
「大丈夫なんですか?」
『あ?酔い覚ましって言って出て来たから』
「飲み過ぎ注意ですよ?」
からかい気味にそう言うと、
『やっぱクルミちゃんと飲む酒の方がうまい』
ほんと相良さんってこういう事さらっと言うから困る。さっきから攻撃されっぱなしで、会いたい思いが募る一方。
「じゃあ、帰ったらまたあのワイン飲みましょうね」
『ん、じゃあクルミちゃん家経由で帰るかなぁ?』
経由も何も、東京駅からわざわざこちらに向かわなくてはいけない。それに去年の事が思い出されて……
「じゃあ東京駅で待ち合わせして帰る?」
『残念、クルミちゃんの育った所見たかったのにな』
本当に残念そうに言うから「また今度ゆっくり」とうっかりそう言ってしまった。
『わかった、約束な』
嬉しそうに言葉が返ってきた。
むしろ相良さん育った所を見てみたい。私がそう言ったら相良さんなんて答えるかな?
少しでも知りたいなんて。
『じゃ、そろそろ帰るわ』
「あ、うん。電話ありがとう」
『ん、また明日電話する』
「おやすみなさい、良いお年を」
あと数時間で年が明ける。新しい年はどんな年になるんだろう?
一年が相良さんで一杯になればいい、そう思いながら通話を終了した。