初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
―――トントン
部屋のドアがノックされ、カチャリと扉が開いた。
「お姉ちゃん、お風呂入っちゃいなさいって」
「あーうん、わかった」
そう返事をしてから
『あ、そろそろ切るよ』
妹の声が聞こえたらしい。名残惜しいけど今日は「あ、うん、またね」と言って通話を終えた。
「あーごめんね?彼と電話中だった?」
「大丈夫、切ろうと思ってたところだから」
「結婚式の話、言っておいてね?」
まさか本気だったとは。念を押すって事はすでに頭数として数えられてるって事。
「でも、日にちとか決まってないんでしょう?」
「え?もう決まってるよ」
「は?プロポーズ受けたばかりじゃないの?」
「受けてすぐに事態が変わって。彼が四月から転勤になるからついて行く事にしたんだ」
「そうだったんだ、で?どこに転勤?」
「本社」
ってことは?
「大阪、なんだよね彼の会社の本社は」
「え?そうなんだ?ちょっと遠くなっちゃうね……」
結婚するってだけで寂しい思いがあったのに、遠くに行っちゃうんならなおさら。お母さんが私に結婚は今すぐじゃなくてもみたいな事を言ったのも、これが理由の一つなのかもしれない。
「まぁでも国内だしね彼と旅行がてら遊びに来てくれてもいいしね?」
って、ちょっと待って。四月から転勤ってことは結婚式っていつ?