初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
部屋に入ると席を立ちこちらにパタパタと駆け寄ってきた桃華ちゃん。

「クルミさんっ、すみませんどうしても私お話したくて」

ちょっと目を潤ませて縋る桃華ちゃんはすごく可愛らしい。
うん、間違いなくこんな事されたら男子じゃなくてもいいよって言ってしまう。

「いえ、こちらこそお邪魔じゃないですか?」

「すみません、私もお邪魔しちゃって」と続けてノリちゃんも言う。
私もノリちゃんも桃華ちゃんというかむしろ、その婚約者。えっと、堂地さん、だっけ?に向けて問いかけた。

「桃華がワガママ言ってすみません。こちらとしてはお酒はたくさんで飲んだ方が楽しいから是非にとお誘いした所です」

さり気ない気づかいに本当にこの人は一つ上なのかと疑いたくなる。細いフレームのメガネをかけて一見冷たい印象の彼は、桃華ちゃんを見る視線だけは穏やかで優しい。


「あ、そうそう。さっきお料理教室の話、お二人にお願いした所だったの」

「わわ、こっちでもお教室やるんですね?」

と、桃華ちゃんが目を輝かせて聞いてきた。

「ええ、そうなの。桃華ちゃんも良かったらまた参加してくれるかしら?っと、桃華ちゃんじゃなくて、堂地君に聞かなきゃいけなかったかしら?」

「ミレイさんっ。私っ、私だけに聞いてくれたら大丈夫なんですってばっ」

と、頬を膨らまして怒る姿はやっぱりまだ学生のようで。

「あら、それはそれは」

「ハァー。ミレイ、あいかわらず言葉の使い方が下手ですねぇ?」

「日本語が難しすぎるのよっ」

と、どうやらこの二人が言い合いするのはいつものことのようだ。
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