初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
「えと、お名前伺ってもいいですか?」
「あぁ、ごめんなさい。小山田紀夏です」
「ちょ、ノリちゃん。小山田じゃなくて木村でしょ?」
「そうだった。書類でしかその名字書かないから……」
ノリちゃんは仕事では旧姓のままだから、口に出して言う事もないんだろう。
「結婚してもお仕事続けてるんですねー」
そう言って桃華ちゃんは尊敬の眼差しでノリちゃんを見ている。
それにも動じずにノリちゃんは「まぁ、主婦向きの性格でもないから」と淡々と答えた。
私なら即やめちゃうけど、ノリちゃんは器用だからどっちもうまくこなしてるんだろう。
「ま、子供でも出来たらそうも言ってられないけどね」
「ですねー」
桃華ちゃんはまだ籍は入れていないとはいえすでに一緒に住んでいるというし、二人は共通する部分もあるのかすでに打ち解けている。
「そうそう、クルミの名前もノリカなのよ?」
「へ?潤兄が呼ぶからそれが名前だと思ってて。可愛い名前だなぁって」
「そうよねー、普通。」
「はは、胡桃澤訓歌なんだけどね?中学の頃って名字で呼び合ったりするじゃない?それで長いからって短縮されてそう呼ばれるのが今では普通になってるの」
「そうなんですねー」
「ん、でも私たちの事はクルミとノリカでいいよ」
「はいっ、わかりました!」
なんて素直で可愛いんだろう。この子は雰囲気を作ってるわけではなくて、素でこれとは。この年までよくこのままでこれたものだ。
と、その時ふと相良さんが桃華ちゃんを見守る目がすごく優しかった事を思い出した。