初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
「さむっ」
いつものようにグルグル巻きにしたストールを口元まで上げる。
スーパーは駅を超えた側にあるから、家からは十分弱といったところ。駅から家路に向かう人とすれ違いながらも何を作ろうかと頭の中で考え始める。思い立ったはいいけど、何を作るかきちんと決めてからくればよかったとすぐに後悔。
「んー……何にしよ」
「何が?」
まさかいつの間にか声に出してたなんて気付きもしなくて。しかもそれに答えが返ってきた事に驚いて顔をあげる。
「え?」
「こんばんは。クルミちゃん」
ニコニコとしてそこに立っていたのは大和さん。すぐ後ろに居るであろう相良さんはいない。
「はは、ジュンキならコンビニ」
「え?あ、えと。こんばんは?」
相良さんを探した自分をすっかり言い当てられ、照れくさくなって挨拶さえ疑問形。
「あ、今日はどうしたんですか?」
「うん、ジュンキにうまい店連れてけって言って、着いたらこの駅だった」
どこかな?イタリアンかおでんか……
「なんだ、ジュンキもう戻ってきちゃったの?」
大和さんのその言葉に振り返ろうとしたけれど、そのまま後ろから強い力で腰に絡みついた腕。
「悪いけど、うちの彼女口説かないでくれる?」
ちょっと怒ったこの声は間違いなく相良さん。