初恋のカケラ【3/13おまけ更新】

「リョク、白でもいいよな?」

「うん、俺はなんでも大丈夫」

「つうか、まじで口説くのやめて。ほんと」

その声で、時間が動き出した気がする。瞬きするのさえ忘れてた。いや、大和さんの言ったその言葉の意味。それをゆっくりと頭の中で反芻していた。

「口説いてないって、ねぇ?クルミちゃん?」

「え?あ、はい。全然そういうんじゃないから」

じゃあどう言うのだって聞かれると言葉に詰まるけど。

「本当に面白いぐらい……」
「もうっ、まじでカンベンして」

その後も相良さんを揶揄い、私はそんな二人の見ている。
時折大和さんは私に話を振ってくれて全く疎外感なく楽しく食事をすることができた。
相良さんも大和さんもこういうところ、すごくスマートだ。


     *****

相良さんと並んで歩く帰り道。
まだ今日は火曜日で今度は週末の時間のある時に一緒に飲みに行こうと約束をして大和さんとは駅で別れた。

「クルミちゃん、まだ寝ない?」

「まだ十時過ぎなのに、寝ない寝ない」

相良さんの質問に笑いながらそう答えると「じゃ、少し寄って行っていい?」と言われて家を出るときの部屋の状況を思い出した。料理本とかこの前のレシピとかそのままにしてきたからまずい。

「あーっと、今日は散らかってるから……」

と語尾を濁して答えると、

「急にはそうだよな。ごめんごめん」

相良さんが一瞬、寂しそうな顔に見えたのは気のせい?
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