初恋のカケラ【3/13おまけ更新】

「お父さんが居ないから手抜きでごめんね」

なんてお母さんが言ったけど私が昔美味しいと言ったおかずと共に大きな鍋が置かれている。
お父さんは会社の人たちと飲んで帰って来るらしく、今日は三人での食事。

「でもこの時期の鍋っていいよねー。簡単だし、それっぽく見える」

「そうなのよ。お母さん今日は一杯楽しちゃったわ」

まるで主婦の会話。
毎日の献立を考えるんだから一日鍋にした所で誰も文句は言わない。それに気づいたのは一人暮らしをしてから。

結婚したら毎日するんだしレパートリーは一つでも多い方がいい。
ちょっと手伝っただけでこんなに喜ばれるんだから、

「春から料理教室通う事になったんだ」

「え?お姉ちゃんが?」

「あーちょっと知り合いの人に来て欲しいって言われて」

「あら、そうなのね?」

嬉しそうに瞳を輝かせて詳細を聞きたそうにしている。なのでそこまでの経緯をかいつまんで話をするとお母さんは「今日は特別ね?」そう言ってお父さんのとっておきをこっそり持ち出して来た。

とっておきは日本酒。
ビールぐらいならたまに飲むけど、女三人で日本酒とは。

「明日はお昼からお食事だから二人とも飲み過ぎないでよ」

「はいはい、わかってます」

まさか自分の家族と女子会?するとは思わなかった。けれどこんな時間もあと少しかと思うと「愛歌、幸せになってね」こんな言葉もスルリと口から出てくる。
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