初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
「モモの潤兄にはなれませんし」
「こっちも桃の言うジュンさんにはなれないからな」
なんだかややこしい。
同じ“ジュン”なのに、役割の違う二人をうまく呼び分けしてる桃華ちゃんが一番すごいのかもと思ってみたり。
「もうっ二人とも、訳の分からない事言ってないで」
オロオロするかと思いきや、桃華ちゃんはいたって普通。見ているこっちがハラハラしてるというのに。
「へいへい、俺だってクルミちゃんだけのジュンになるからいいんだよ」
「言いますねぇ」
「うわぁ、今日の潤にぃはホントすごいっ」
居たたまれない。三人の視線が。
「ちょ、クルミちゃん。そこは軽く「ねー」って言ってくれないと」
「はは、サガラさんをこんな風にさせるとは案外クルミさんが一番……」
どうしてそこで言葉を止めるのか、ふと気になって顔をあげると。
「ね?すごいでしょ?クルミさんて」
「そうですね、モモの言うとおりですね」
堂地さんと桃華ちゃんがニコニコしながら頷き合ってる。
そして隣を見れば、少し拗ねたような相良さんがビールをあおってる。
うまく言葉にできない代わりにスーツの裾を引く。すぐに気付いた相良さんがコトンとテーブルの上にビールジョッキを置くとそのままテーブルの下におろした手をそっと上から握りしめた。