初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
坂下くんはクラス委員もするような優等生だった。
女子には名字をさん付けで呼ぶような礼儀正しい所もあった。

あの頃のモテ要素って。頭がいい、スポーツが出来る、ちょっとワルっぽい。坂下くんはそのうちの前の二つをクリアしてた。
先輩や木村みたいな親しみやすさはないけれど、スッとした顔立ちでひそかに女子にも人気があった。

そんな人があの頃から先輩を羨ましいって思ってたってこと?

あの頃の私は、ちっとも本当の坂下くんの見抜けずに好きだとか言ってたってこと?
顔がイイって騒いでた子たちと一緒?
同じ部活でちょっと知った風につもりになってた?

今思えばあの頃の“好き”は単純で、“いいな”がすぐに“好き”になった。

当時の好きって気持ちは、あの頃なりに一生懸命だったはずなのに。今考えてみれば幼稚で単純で気持ちは思うがままに突き進んでた。

覚えたての恋に一生懸命だった。

好きだって確かに思ってたけど、それは独りよがりの気持ちであくまで一方通行。彼の気持ちやその先の事なんて全く考えてなかった。

でも、今なら分かる。

告白しなかったのは、その先が想像できなかったから。
だから告白することができなかった。

坂下くんの事を好きだったのは嘘じゃないけど、みんなと同じように表面ばかり見て恋してた。

あれが私の初恋だったはずなんだけどなぁ……
< 70 / 820 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop