初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
「クルミ」
久しぶりに聞いたその声。こう呼ぶのは、
振り返るのを拒むように軋む首を気にしつつ立ち止まる。下を向き小さく息を吐いて気持ちを整えてから振りかえった。
「……先輩。お久しぶりです」
「今日はおめでとう。友人が妹さんと結婚って聞いて驚いた」
今まさに、私がその瞬間で。ていうか、愛歌知ってたなら何で……?心の準備というものがあるのに。
変わらない笑顔。年齢よりも若く見えるのは相変わらずで、彼の友人席の中でひときわ目立つからきっと、愛歌の友達が言ってたのは先輩の事。
とりあえず「ありがとうございます」と言ったはいいけど」あとが続かない。
先輩の事はもう吹っ切れてる。何より今私はすごく幸せだ。だけど何とも複雑な気持ちが渦巻いてる。
ほんの数秒だったのか、数分だったのか、不意に後ろから声がした。
「クルミちゃん?」
なんてタイミング。いつも困った時に現れる。
振り返って見あげると、相良さんは小さく頷いた。大丈夫というように。