初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
遅い時間の到着にもかかわらず、旅館からのマイクロバスの送迎付き。

私たちと同じように金曜の夜からの時間をゆっくり過ごしたいという人は他にもいたようで。そういえば駅のホームで見かけたかもしれない。

一組はちょっと二人の世界な感じだったから邪魔しないように注意しながら「こんばんは」と小さく挨拶をして車に乗りこんだ。

「一時間ぐらいだって」

たった一時間であんな風景の場所にたどり着くんだろうか。
杜の都とはいえ、ここは大都市で、HPの画像で見た場所はおもいっきり森の中にあったように見えた。

「そんなに遠くないのね」

「まぁこのへんは開けてるけど、住宅地超えたら畑も田んぼもあるからな」

そうだ。ここは相良さんの育った町。

「相良さんの家はこの近く?」

「や、うちはここから電車でちょっと行ったとこ」

「そうなんだ。夜だから景色が見えないのが残念」

「はは、でもほんと田んぼと畑だよ?」

もしもそうだとしても。それはそれで相良さんの育った場所として記憶にとどめておきたい。
子供の頃はどんなだったのかな?とか考えながらその景色を見るのもいいかななんて。

「日曜日楽しみにしてる」
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