初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
旅館を出てから30分ほど電車に揺られて着いた場所。

「ごめんな?こんなとこで」

こんなとこって相良さんは言うけど、そこは厳かな霊園で。だけどなんて答えていいのかわからなくてただ首を横に振る。

「ここさ、うちの父さんが眠ってんだ」

あらためてその霊園を見渡して「お花とか買ってくれば良かった……」と呟く。

「あーここ、生のものダメだから、花とかも置けないんだよ」

「え?そうなの?」

食べ物は鳥が荒らすからダメって言うのは聞いたことがある。けどお花もダメとかって今時普通なの?

「ま、供えたきゃ実家の仏壇に置きゃいいってだけの話」

「そう、だけど……」

でも、なんていうか。やっぱり初対面?ていうか初めてなんだからその辺きちんとしたいって思うのはおかしい?

「じゃ、明日うちに持ってこうか」

「……うん」

そうだ。明日は相良さんの実家に行くんだった。

「ま、とりあえず、こっち」

そう言って手桶に水を汲み歩きだした相良さんに後ろから着いていく。

それにしても広い霊園。一人で来たら間違いなく迷子。ふと止まった先に見えたのは相良家の墓。
< 747 / 820 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop