初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
ピピピピピピ……

お湯の溜まる音が聞こえてきて、相良さんがそっと拘束を解く。
その瞬間、ほんと一日も早く一緒に居られるように準備したいと思ってしまう。

「クルミちゃん。お湯たまったって」

ん、わかってる。でも離れがたいんだって……。そう言葉で言えなくて。

「ほら、行くよ」

ん?行くよ?だから、相良さん一人で……。

そのままガッチリと肩を抱かれて浴室に強制連行?!

って、えええええ?!

そのまま引きずられようにして浴室にたどり着いた。

「さ、早く入んないと冷える」

私の浴衣の胸元をグイッとはだけるようにして手をかける相良さん。

「ちょ、あの。相良さん一人で…―」
「まさか、一人で入れとか言うつもり?」

「や、だって。ほら。ねぇ?」

何がほらねぇだ。って自分に突っ込みを入れたりしたいところだけど、今はそれどころじゃない。

「せっかくだから。一緒に入るべきだと思うけど」

そう当たり前のように言う相良さん。

一緒に居たい気持ちは尤もだけれど。だけど、お風呂って明るいんだって。
それに朝、だし。いやいや、夜だってダメだし。

「……あーじゃあ。五分、いや三分後に入ってきて!」

そう言うのがやっと。だって離れがたいのは私。だから。
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