初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
*****
「堂地君たち、少し遅くなるから先に飲んでるようにって」
そう言ってワインのボトルを準備してきたのはオーナーの奥さま。でも、いきなりボトルって……
「アイツが遅刻って珍しいな」
「そうね。」
「ま、どうせ桃がなんかやらかしたとかその辺り?」
「ふふ、二人が来たら聞いてみて。」
綺麗な所作でゆっくりと退出していった。それを見送ってテーブルに視線を戻すと相良さんがボトルを見始めていた。
「お、これって前に母さんが送ってきたのと同じ畑のやつだな」
「え?そうなの?」
畑って言われてもよくわからない。味ならまぁなんとかってぐらいで。
「じゃ、乾杯」
「本日一度目のね?」
グラスを掲げてから口に少し含むと甘い香りに包まれた。そう春の始まりみたいな……
さっき見た桜を思い出した。それを見ていたら、
「……桜の季節がいい……結婚式」
「ん?クルミちゃん。後一年もあるけど?」
苦笑いして言う相良さん。
それもそうだ。だって今桜が咲いてるんだから。でも桜の花の舞う中で誓いたい。そう思った。
「……そうだよね。ごめん、忘れて」
「クルミちゃんの初めてのワガママだから聞いてあげたいけど、俺が待てそうにないな」
相良さんの言う事は尤もで。私もきっと待てそうにない。