初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
『呼び方なんて好きにしなさいよ』
その言葉を捨て台詞のように電話がきれた。
ごもっとも。
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「ハァ、困った。」
「早いな、クルミ」
その声に顔を上げると、先輩が目の前でニコっと笑ってる。
休みの日に待ち合わせをしたのははじめてで、当然私服姿も初。
ボタンダウンのシャツの上にアラン編みのニットカーデ。それにチノパン。
年齢にしてはかなり若い印象のコーデだけど、先輩にはすごく似合ってる。
その姿に言葉なく見とれてしまう。
「クルミ?待ちくたびれた?」
「え?あ、いえ。今来た所です」
先輩は私を見て、少し目を細めてから
「なんか雰囲気違うな。」
いつもビシッとスーツを着こなしていた先輩に合わせて今日の私は、シフォンのブラウスにひざ丈のふんわりスカート。それに上着を羽織ったスタイル。
こうして並んでるともしかしたら一つ上の先輩よりも私の方が上に見えたりするかもしれない。
「それはこっちのセリフです」
「ん?」
「なんか、先輩すごく……若く見える」
「ハハ、若いか?」
「はい、いつもは大人の雰囲気なのに今日は―――」
「本当はあういうの苦手なんだよ、こっちが本来のオレ」
顔をクシャッとさせていつもの人懐っこそうな笑顔を見せる。
わー、すごいわ。これ。
好きとかじゃなくても、こういう顔されるとぐっと気持ち持っていかれる