初恋のカケラ【3/13おまけ更新】

「うん、桜の下で出会ったあの日の事、思い出してた。」

「あぁ、あの日も散々飲まされてたからなぁ、俺」

「ふふ、でもそんな感じしなかったけれど」

「よく言うよ、全然俺の顔見てなかったくせに」

う。それを言われると……。確かに顔は見てなかったかもしれないけれども。でもその大きな手のひらだけは鮮明に覚えてる。

そぉーっと相良さんの手を掴む。そしてその手のひらをそろっと撫でた。
その時強い風が吹いて、頭上の桜を見ると花びらが舞い降りてきた。

「あ、」

その開いていた掌にそっと乗った花びら。それを相良さんはキュッと握りしめて。

「やっぱりサクラは幸せを運んでくれてるな」

その幸せを毎年一緒に感じるのは相良さんと。

「……うん。」

「よし、決めた。子供が出来たらサクラって名前にしよう」

「え?」

まだそのカケラだってお腹に入ってない。だけどその名前ならきっと幸せになれるだろう。そう思えるから。

「ふふ、気が早い」

「そうかな?俺は今すぐでもいいよ」

男の子だったら、なんてこと考えもしないんだから相良さんらしい。

「潤にぃ、クルミさんにも式に出てもらいたいからもう少し我慢してね?」

間顔でお願いする桃華ちゃんに相良さんも苦笑い。

「善処します」

その相良さんの言葉に私たちもみんなで笑う。
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