初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
ノリちゃんは持っていたグラスに口をつけると、今度は普通のボリュームでもう一度言った。

「聡と付き合ってから、ヤってないどころかキスだって一回しかしてない」

あれから一カ月以上経ってる。

ヤってないはいいとしても、キスも一度？
会えてないならともかく、毎週のように会ってる。
平日にデートだってしてるだろうし、キスぐらいならどこでだって出来るはずなのに。

「なんで？」

「こっちが聞きたいわよっ」

だよね。
でも、結婚前提っていうからにはそっちも込みで考えるもんじゃないのか。

ノリちゃんは切れ長の二重が印象的な美人顔だ。
それに私と身長はたいして変わらないのにスラっとしたイメージなのはスタイルの良さからくるものだと思う。
見るからに大人の女で色気もあるノリちゃんに、欲情しないなんてことはあり得ない。

でも、木村には木村の考えがあるのかもしれないし。

「聞いてみた？」

「は？！そんな、の。……聞けない、し」

うわ。ノリちゃん可愛いっ。
酔ってるからだけじゃないピンク色の頬。
すっかり顔は恋する乙女。

木村の事となるとノリちゃんは途端に当時の気持ちに戻ってしまうらしい。
気持ちはわかる。それは私だって同じ、だから。
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