初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
「初恋の相手と結婚なんてさ、なかなかないじゃない?しかも再会してすぐにとか」
「そんなのわかんないじゃない」
ノリちゃんはわからないと言ったけど、ほぼ決定事項だろう。
なのにノリちゃんは不安げに続ける。
「だって私、あの頃みたいに純粋じゃない」
色々経験してきた。
だけど、あの頃の記憶とともに純粋な気持ちは甦ってくる。
「まぁね、だってあれから十年以上経ってるもの。だけど純粋じゃないとは言い切れないと思う」
どうして?そんな顔でノリちゃんは見てる。
あの頃のノリちゃんも今のノリちゃんも私には純粋に見える。
むしろあの頃は純粋じゃないなんて勝手に思ってたぐらいで、今思い返せばそれが違ってたことぐらいはわかるけど。
「でも、もう。違うんだよ、あの頃とは……」
ノリちゃんは目を伏せて、何かを思い出したのか苦い顔をする。
そして何かを決意したかのように目を開いて私を見るとハッキリとした声で言った。
「私ね、人には到底言えない恋愛してたの、……もうずっと。だから純粋でなんかないんだよ。」
人に言えない恋愛。
苦い顔をしていた理由。
……「坂下は結婚してるからダメ」
そう言った時のノリちゃんのあの表情。
すべてはそれだったのかとやっと色々繋がって。
今更ながら、ノリちゃんの核心に初めて触れた気がした