キミのことは好きじゃない。
Friend:Ⅳ
「それじゃあ、よろしくね!阿藤、また連絡するから」
しこたま酔った百田を妊婦の山中が抱えて帰る姿に一抹の不安を覚えたけれど、慣れているからと送るのを断られれば頷く他なく私達は2人と別れた。
残ったのは、颯斗と私だけというこの状況は本当に困るのだけど。
「じゃ、じゃあ、私も帰るね。今日は実家に泊まるから……」
颯斗に別れを告げて、さっさと背中を向けて歩き出す。
声をかけるな、追ってくるなと願いながら進む私の腕は、けれどあっさりと颯斗に掴まれてしまう。
「声も聞きたくない位、俺の事が嫌になったのか?」
背後に掛けられる声は、ひどく落ち込んだものだ。
ほら、やっぱり颯斗の事を傷つけてしまった。
傷付けたくない。誰よりも大事な……親友なのに。
掴まれた腕を払う事もできずに振り返って颯斗を見た。
「颯……斗」
「百合、あの日のことをずっと……」
「謝らなくていい。あれは事故だから!」
颯斗の言葉に被せるように声をあげた。
謝る、なんて颯斗の口から言われたら……後悔しているなんて言われたら私は泣いてしまう。
颯斗が困るのを分かっていて、それでもきっと泣いてしまう。
だから、強がりでもなんでも泣かずに済むならその方がいい。
「……事故」
「そう、事故なの。それに、私本当のところ覚えてないんだ。サッパリね。それってお互いにラッキーじゃない?記憶にないんだもの。元々ないものを覚えておく必要ないんだし……ほら、だから颯斗は気にせず彼女と過ごしたらいいの!」
「……」
言いたい事を言った私とは違い、颯斗は何も言わなかった。