キミのことは好きじゃない。
「……じゃあ、ね。しばらく連絡しないから。お互いに頭冷えて……また、友人の1人としてお酒を飲めるようになればいいなって思うけど……。あ、山中の結婚式では会っちゃうかもしれないけどそれ位は許してね」
バイバイ、と手を振る私に答えてくれる手はなかった。
これでしばらくは会う事もできないんだと寂しく思いながらも、こうなることは分かっていたことだと諦めもしてた。
思ったほどの落ち込みにもならなかったのは、高校の頃振られた時に耐性ができていたおかげだろう。
一歩、二歩と颯斗との距離が開いていくほどに胸に引っ掻き傷みたいな痛みが走る。
擦り傷なのに繰り返されるたびじわじわと痛みが襲う。
それと同時に涙が浮かんできた。こんな傷の痛み位で泣くなんてあり得ないよ。この歳になって。
「……なこと……じゃねぇよ」
颯斗の声が聞こえた気がして足を止めた。
気のせいかもしれないと思って、振り返ることはできない。
「勝手なことばっかり……言ってんじゃねーぞ!百合の阿保!」
今度はハッキリ聞こえた。
阿呆って貶し言葉までしっかりと。
振り返れば、ものすごい形相で颯斗が近づいてくる。