キミのことは好きじゃない。



「は、颯斗?」


さっきよりももっと強い力で腕を掴まれた。


痛みに顔を顰めてしまうくらい。


「百合、何を勘違いしてるか知らないけどな。俺はあの日の夜のことを謝るつもりなんてこれっぽっちもないから!」


謝るつもりがない……って、やっぱり私から颯斗を?


「ごめ……そうだよね。私が颯斗を無理矢理……」


「馬鹿!違う。別に百合に誘惑されたとか、襲われたとか、そういうことじゃない」


「じゃ、じゃあ……」


颯斗の怒り心頭な様子に尻込みしつつも、話の意味が分からず尋ねるしかなくて。


「覚えてないみたいだから、仕方ないけどな……いくら俺でもあんな風に黙っていなくなられたり、事故だったとか、まるきり覚えてないからラッキーだとか言われれば傷付くんだよ!」


傷付く、と言葉にした颯斗は今にも泣き出しそうな表情をしていた。


でも、私には颯斗がそんな風になる理由が分からない。


だからなんて言えば颯斗の傷を癒せるのか分からない。





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