キミのことは好きじゃない。
「ちょっとこっち来い」
不機嫌なままの颯斗に腕を引かれて、実家とは反対方向に歩き出した。
どこに行くんだろう。
気になるけど聞ける雰囲気じゃない。
普段から感情を露わにする人じゃないから、怒っている颯斗にどういう風に接すればいいのか本当に分からない。
「百合……お前さ、付き合ってる男がいた時、その……酒飲み過ぎたこととかあるのか?」
「へ?」
突然ふられた話題の意図が、さっぱり分からない。
「百合は酒強いのかと思ってたけど……」
「強いと思うけど。そりゃあザルの颯斗と比べたら全然だけど。今まで誰にもお酒が弱いなんて言われたことないし、それに付き合ってる彼氏とだってそんなに飲みに行ったことないよ」
私は酔わない自信があったけど、相手がどうかだなんて分からないし、酔った男の人相手にそういう雰囲気になった時逃げられるかどうか分からないじゃない。
「安心して飲めてたのは、颯斗といる時だけかも……そう言われてみれば」
よくよく考えてみれば、彼氏と2人で飲むなんて事も数えるほどしかなかったような……。
今思えば最悪な彼女だったな、私。