キミのことは好きじゃない。


前を向いて歩いていた颯斗が、ふと足を止めて私を見下ろした。


「今、付き合ってるやついなかったよな?」


「は?……ここ1年誰とも付き合ってないことは颯斗だって知ってるじゃない。てか、一体なんなのさっきから……あ、もしかしてあの日の……」


こんなにしつこく聞いてくるなんて、余程の醜態を見せてしまったんだろうか。


酔って、雰囲気に流されて……的な話だと思ってたのに、もしかして暴れたりした?


「百合はもうあんまり酒飲み過ぎんな」


子供を叱るように私に向けてそう言った。


できれば早く忘れてしまいたかったし、というか、覚えてないから忘れようもないけれど、颯斗にもあの時のことは早く忘れて欲しいし、触れないで欲しい。


と、思っていたけれど颯斗がこんな風に気にするほどの醜態を晒したのなら聞いておきたい。


自分が何をしでかしたのか。


「あの、私あの日どうなったの?」


「聞きたいのか?」


「う。聞きたい……ような、聞きたくないような」


「聞かない方がいいと思うけどな」


「えっ、なにそれ。そんなに酷かったの?」


穴、穴を掘っておこうか。聞いた直後隠れられる穴を。


「……少なくとも、普段の百合からは想像もできない……」


颯斗が言い淀み、顔を赤く染めた……ってなんで⁉︎







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