キミのことは好きじゃない。
「いや、やっぱり言わない」
あっさり背を向けて再び私の腕を引いて歩き出す颯斗について歩く。
それきり黙り込んでしまった颯斗に不安になりながら、それでもついて歩いていられたのは、いつの間にか掴まれていたはずの颯斗の手が私の手を繋いでいたからだ。
颯斗と手を繋いで歩くなんて、初めてだ。
大きくて骨ばった手が、私の手を包み込んでいるのを見下ろして、くすぐったい気持ちを堪えた。
こんな事で喜ぶ自分は馬鹿だ。
この手は私の手じゃなくて、颯斗の特別な子の為の手だから。
目指す先になにがあるのか、なんとなく分かってきた頃、繋いでいた手がそっと離れた。
あ……、と名残惜しさに溢れた声は颯斗には聞こえなかったようでホッとした。
「高校に来たかったの?」
「あぁ。懐かしいよな」
裏門から中に入り、私達は校舎の中は足を踏み入れた。
あの頃抱いていた想いが、ゆっくりと蘇っていく。