キミのことは好きじゃない。
「変わってないね」
校舎も、廊下も、教室も、なに1つ変わっていなかった。
あの頃のまま、懐かしくて愛おしい空気のままそこにある。
ここで颯斗に出会い……恋をした。
今、心が成長した今なら、はっきりと分かる。
なりたかったのは、颯斗の『親友』にじゃなくて『彼女』だった。
言い訳を並べて、嘘をついて、自分の気持ちから逃げて……。
そんなことばかりして、颯斗の特別になんてなれるわけがなかった。
そんな嘘ばかりの自分は、自分だって好きになれないし、颯斗にも、他の誰の特別にもなれるわけない。
今ならあの頃どうすればよかったか分かるのに……。
でも、もう遅い。
颯斗には特別なコがいる。
「あ、ここだ。俺らの教室」
颯斗が1年の時の教室へと入っていって、教室の電気を点けた。
真っ暗だった教室がパアッと明るくなる。
そして彼が腰掛けたのは、私達が初めて隣同士になった場所だった。
「ホラ、百合はここ」
自分の隣を指差しながら手招きする。
促されて昔自分が座っていた椅子に腰掛けた。
「……こんなに近かったんだね」
お互いに向き合って座って気付いた。あの頃もこうして同じように向かい合って喋った。
隣り合う席はこんなにも近くで相手を感じてドキドキしてた。
楽しくて、嬉しくて、幸せだった。