キミのことは好きじゃない。


颯斗から根掘り葉堀り彼女のことを聞きながら、気付けば目の前には空になったビールジョッキが数本と、いつ頼んだのか覚えていない冷酒の徳利が並んでいた。


お酒は強い方だと思う。酔いはしても記憶をなくしたことはないし、二日酔いにだってなったことなかった。


颯斗はザルで、私より更に上をいく酒豪だ。


お互いにお酒が強いことも親友を継続していける要因の1つだったと、私は思ってた。


「颯斗……大事にしなよね、そのコのこと」


「……分かってるよ」


そう言って、ちびりちびりと冷酒を飲む颯斗の横顔に、なぜだか今日は見惚れてしまった。


好きな子のことを話す男の人って、みんなこんな表情をするのかな、なんて思いながら。




< 8 / 42 >

この作品をシェア

pagetop