キミのことは好きじゃない。
Friend:Ⅱ
夢現に聞こえていたのは、颯斗の私の名前を呼ぶ声だった。
百合、百合と何度も何度も呼ばれていた気がする。
そう言えばいつからお互いの事を名前で呼ぶようになったんだっけ?
出会った時は『神流くん』、『阿藤さん』だった。
同じクラスになって、隣の席になって、なんだか話しやすい人だなと思ったのが最初。
そのうちお互いの得意科目の勉強を教えあうようになって、意外にも趣味が合って、話しているのが楽しくて……。
いつからかなんて覚えていない。
気付いた時には、『颯斗』『百合』と呼び合っていた。
颯斗の隣があんまりにも居心地が良くて、その場所を誰にも渡したくなくなってた。
女扱いされていないから、最も親しい女友達として隣りにいられたのだと思うけど、颯斗の気持を確認したことはない。
男って、そういうことに疎い生き物だと知っていたから。
意識させて今の心地よい関係を壊すなんて絶対嫌だったから。
でも、私は……好きなのかなって思ったこともあった。
周りに彼氏彼女として付き合う子達が増えていくと、『あんた達は違うの?』と聞かれることもあって、私は勿論颯斗も笑って否定していたっけ。
でもふとした時に、もしかしたら颯斗も少しは私のこと……なんて思ったことはあった。