サバイバル

「サエさん！」

気がついたら、私はその金髪ロン毛男を引っぺがして、サエさんを抱きかかえていた。
良かった…あったか医師、しっかり息もしている。

「やー、知り合いか？」

そう後ろから声をかける甲斐クンを完全に無視して、私は起こす行為に夢中になる。
そりゃあ…ビックリしたわよ。
だって、絶対にこっちに居ないと思っていた人に最初に出会っちゃったんだから。
それに…誰も知っている人がいない中で、サエさんに会えたのはやっぱりうれしかったから。
大きくゆすって声をかけ続けると、ゆっくりとサエさんが目を開いた。

「サエさん！」

もう一度大きな声で呼びかけると、今度はしっかりと目を開けてあたりを見回す。
気を失っているうちに、どこか打ったのかもしれない。
頭を動かすと「う…っ」と、眉をしかめる。

「あれ？俺…ここは何処だ？」

「サエさん、しっかり！！アサミだよ！！」

まだボンヤリとするサエさんをしっかりと抱きしめて顔を覗き込むと、ようやく気がついたかのように、私の方へと顔を向ける。

「あれ…アサミ？」

「良かった～！サエさん、大丈夫？今までここで倒れてたんだよ。」

ほっとして手を緩めようとすると、今度はサエさんの方からギュッと腕を掴んできた。

「え？」

驚いたように声を上げてしまった…というのも、急にサエさんが私の手のひらへとつかんだ手を移動させ、自分の頬にくっつけてきたから。
思わず顔が熱くなって、固まってしまった。

「良かった…アサミ、無事だったんだね…。」

そう言うと、サエさんは再び安心したように目を閉じた。
私の手は相変わらずギュッとつかんではいるが、さっきのように頭が動いても眉をしかめる様なことはない。
私はというと…あまりにビックリしちゃって、そこから動けずにいたけれども…。

「とりあえず…こんな水辺も危険ですから、場所を移動しましょうか。」

日も暮れてきたことですし…と、えいしろーが言ったのを合図に私は横から金髪ロン毛男に一緒に支えられ、サエさんの肩を支えて立ちあがった。

「いなぐを心配させるっちゃー、罪なオトコだな。」

重いやっさー、と…自分よりも十センチ以上も大きな男を支えながら、金髪ロン毛男はため息をついた。