サバイバル
サエさんはあれから、しばらく疲れたように眠り込んでいた。
その間に私たちは砂浜と森との間に寝床を作って(と言っても、葉っぱをかき集めたような簡単のものだけど)、焚き火を炊いた。
気がついたんだけど、この人たち随分『野宿慣れ』しているんだ。
火を起こすのだって、寝床を作るのだって、私がどうしたらいいかアワアワしている中で、さっさと作り上げてしまった。
木の枝で魚を獲って来た時はさすがにギョッとしたけど…。
それでもこの人たちが居なかったら、今頃は遭難しているだろうと思うと、感謝せざるを得なかった。

「さて…まずはお互いを知っておかないといけませんね。」

焚き火の周りに座って(サエさんはぐっすり眠りこけていたけれども)、私たちはお互いのことを話すことにした。

驚いたのは、この人たちは比嘉高校という沖縄の学校のテニス部員で、全国大会で六角と戦ったことがあるということ。
六角は負けたらしいから、私も話を聞く機会が無かったらしい。
比嘉…聞いたこともなかった。
過去に六角が負けた学校…。

「まずは、やーの名前から教えてよ。わったーも何てやーのこと呼んでいいか分からねーもんな。」

金髪ロン毛男に急かされて、私は思わず立ち上がった。

「えっと…わたしは六角高校3年の、五十嵐アサミです。テニス部のマネージャーをやってます。」

「六角にこんなでーじかなさんいなぐのマネージャーがいたんぐゎーやさ。知らなかったさい。」

…と、金髪ロン毛男。またまた何を言っているのか分からないです。

「平古場クン、話の腰を折ってはいけませんよ。」

ゴーヤ食べたいんですか?とえいしろーに言われ、首をすくめていたが、立ち上がって挨拶をする。

「わんや平古場凛さぁ~。『凛』って読んでばぁ。イナグーや大歓迎ばーよ。」

「凛くん、ね。よろしくお願いします。」

言っていることの全部は理解し難いが、なんとなく自己紹介している凛くんに、丁寧に頭を下げる私。
そんな自分を見てか、凛くんは照れくさそうに笑う。

「凛ばっかズルイやっさー!わんや甲斐裕次郎だしよ。ゆうじろーって読んでくれ!」

ゆうじろーが、凛くんの間に入ってくる。




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