サバイバル

「アサミが最初に入ってきたときなんか、剣太郎なんか大変だったんだぞ。『ついに我が男子テニス部に女の子マネージャーが来た！』って…随分口説かれたんじゃないか？」

「ううん。剣太郎くんって結構シャイだから、最初ぜんぜん喋ってくれなかった。私だって、ずっと女子校だったから男の子とどうやって話したら良いかも分からなかったし…。でもみんなが優しくしてくれたから、すぐに仲良くなれたからね。感謝してるんだよ。」

今は仲良く…を通り越して妹や子供扱いなんだけどね。
でも、そんなこの今の環境が私は凄く居心地がいい。
試合に行って、他校の様子を見ていたら分かる。
学校ごとにそれぞれテニス部の色ってものがあるけれど、この家族のような六角テニス部の雰囲気が、今の自分にイチバン合ってるって思うんだ。

「いいえ、こちらこそアサミが来てくれてうれしいよ。ありがとうね。」

「…今日のサエさん、優しすぎてちょっと怖い…。」

「何それ？いじめて欲しいの？」

ニヤリと笑う、いつものサエさんに戻ると、フルフルと首を振って後ずさりする。
サエさんって…優しいけど時々意地悪なんだよね…。まぁ、そんなところも嫌いじゃないんだけどさ。

「結構です！じゃあ、私道こっちだから。」

「うん、また明日♪」

「バイバイ♪また明日！」




また明日……それがこんなに早く再開するなんて、こんな形で再開することになるなんて夢にも思わなかったけど…。




今の私たちには知る由もなかった。