眠り姫は夜を彷徨う
『二人には何かある』と、タカちゃんは圭ちゃんたちの仲を勘繰っていたけれど、半分以上は私に気を使って言ってくれていたのだと解っていた。今日、私の元気がなかったから。実際は眠くてたまらなかっただけなのだけれど。

でも、本当はそれだけじゃない。

どんなに強がってみても圭ちゃんのいない毎日は、あまりに寂しすぎて。違和感があって、不自然で。それは今まで有り得なかった非日常であり、どうしたって慣れることなんか出来ないと思った。


『そもそも如月さんは本宮くんのこと、どう思ってるの?』


以前、磯山さんに聞かれた言葉。その時は上手く答えられなかったのだけど…。

(迷惑掛けないから…。ただ、傍にいたいっていうのはダメ…かな…?)

朦朧とする頭でぼんやりと考えながらも。

次第に落ちて来るまぶたの重みに耐えきれず、紅葉は静かに瞳を閉じた。





所変わって駅前大通り。

桐生は今夜も掃除屋との接触を図るために、この場所に足を運んでいた。

(…今日は現れるか?)

街灯の明かりで星など見えない夜空を見上げて小さく息を吐いた。

流石に今夜も空振りだと自身の調子を崩してしまいそうだ。

不本意ながらも、しっかり振り回されてしまっている自覚はある。だからこそ、そろそろこの行動にも実を結びたいところだった。

(いい加減、鬼ゴッコは終わりにしたいからな)

そこで桐生は今夜、ある作戦を立てていた。

掃除屋は、煽ることはあるが基本的に自分に向かってくる奴等にしか近付いて行かない。戦う気がない奴が近付けば、逃げる。

その行動パターンを逆手に取ることにしたのだ。
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