眠り姫は夜を彷徨う
真面目な顔で淡々と話す立花に。

「なるほど。アイツが夢遊病持ちだってーのは解った。だが、それが今回の掃除屋としての行動にも影響しているって話になると、アイツはあんなに暴れながらも実は寝てたってことになっちまうんだぞ?流石にそれはねぇだろ。シャレになんねぇってーの」

思わず苦笑を浮かべた。

だが、桐生の言葉に立花は表情を変えない。

「…立花?」

その無言の訴えに、桐生は笑みを消すと眉根を寄せた。立花の真っ直ぐ見据える瞳を見れば判る。これは肯定を意味しているのだろう。

「おい…。マジで言ってんのかよ?」

冗談にしては、随分と引き伸ばしすぎではないか。

すると、立花はそこでやっと笑顔を見せた。だが、出て来た言葉は「確かにシャレになんないっスよね」という結局は肯定を意味するものだった。

「俺も実際、最初に聞いたときは信じられませんでした。京介さん程ではありませんが、俺だって掃除屋の強さは目の前で見てますし…。何より眠っている状態で、あんな素早い動きが出来るなんて普通じゃ考えられないですよ」

確かにそうだ。普通じゃない。

「マジだってのか…」

あんなに無駄のない動きで立ち回っているのに、それが本人の意識していないところでの行動だというのか?

「…どんだけ寝相悪いんだよ」

桐生は呆然と呟いた。


そこで不意に、また以前左腕の包帯のことについて話した朝のことが浮かんできた。

『実は私もよく分からないんです。朝起きて気づいたら痣になってて。私、寝相悪いから寝てる間にどこかにぶつけちゃったんだと思うんですけど…』

そう困ったように笑っていた如月。
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