眠り姫は夜を彷徨う
「普段は大人しそうな振りしてるくせに見かけによらず、やること野蛮よねっ。学校の皆が知ったらどうなるかしら。今から反応が楽しみだわっ。きっと、学校側だって黙っていられないと思うわよ?」

今度は嫌味な様子を隠さず紅葉を煽ってくる香帆に、紅葉は僅かに俯くだけだった。そんな二人の間に割って入るように圭は静かに口を開いた。

「そんなの関係ないよ。紅葉は人に責められるようなことは本当に何もしていないんだから」

「圭ちゃん…」

「それに、もし。磯山さんが写真をバラまくことで紅葉に何かあったとしても…」

圭は一旦そこで言葉を区切ると。

紅葉を真っ直ぐに見つめて言った。


「その時は僕も紅葉と同じ罰を受ける覚悟はあるから」


「けい、ちゃん…」





「ちょっ…正気なのっ?!本宮くんには関係ないじゃないっ!」

目を剥く香帆をよそに、また別の声が聞こえて来た。


「よく言った。それでこそ男だな」


突然のその声に、三人が驚き振り返ると。

そこには桐生と立花が立っていた。

「桐生さん…。なんで…」

紅葉は驚いて先程別れて来たばかりの二人を交互に見つめた。

「ちょっと、ね。組の前をうろついている怪しい人物がいたっていう情報が入ったから周辺を見て回っていたんだよ」

立花が横から爽やかに笑って言った。その言葉に香帆が僅かに反応したことに桐生たちは一瞬だけ目を光らせたが、それに紅葉たちが気付くことはなかった。

「でも、お陰で全部話は聞かせて貰ったぜ。本宮が如月以外の女と付き合ってるみてぇだってさっき立花に聞いた時には正直耳を疑ったが…。そういうカラクリがあったワケか」

桐生が口の端を上げた。
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