眠り姫は夜を彷徨う
「これを機に警察もここぞとばかりに今までの事件やなんかの立件に動き出すらしいぜ」

「入院中なら逃げられることもないってか。ま、今まで散々手を焼いてたみたいだしな。これで少しは平和になると良いんだけどな」

「夜道とか、うかうか歩いてらんなかったもんなー」


実際、絡まれたり金品を巻き上げられた被害者の多くは学生で、泣き寝入りしてしまう場合が殆どなので事件にさえならないものが多いという話を聞いたことがある。

そのグループが原因かは不明だが、先日同じ塾に通っている別の高校の男子生徒がやはり帰り道に絡まれ、暴行を受け、かなりの怪我を負っていた。圭にとっても、もはや他人事の話ではなかった。

(ホント、これで少し落ち着くと良いけど…)

横で聞きながら圭は小さく息を吐いた。

自分も気を付けなくてはならないのは勿論なのだが、実はそれ以外に少し気になっていることがあった。


(紅葉…。もしかしたら、あいつ…。また…)


紅葉が例の夢遊病を発症しているかも知れない。

こればっかりは治る治らないではないのだが、ここ最近は外を出歩く程の症状はなく、落ち着いていたというのに。

(まだ確証はない。けど、あの後ろ姿はちょっと…。似すぎていたよな…)


先日、塾が終わって同じ塾の友人たちと話しながら建物の外へと出た時、何気なく向けた視線の先。遠くを歩いている人物の後ろ姿に圭は目を見張った。

(あれは…紅葉…?)
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