眠り姫は夜を彷徨う
「でも、眠りながらにして自ら世直しに精を出してしまうような正義感の強い姫様ですからね。そういない逸材ですよ」
立花が笑いながら言った。
「そんなの、そうそういてたまるかっての。…怖えわ」
肩をすくめて見せる桐生にまたも笑いが起こり、今度は紅葉も一緒になって笑ってしまった。
「でも、本当は眠り姫にだって安眠できる世の中の方が断然良いに決まってるよな?」
優しい笑顔を向けられるのと同時に、大きな手が紅葉の頭の上にポン、と落ちてくる。
「…桐生さん」
「お前が暴れなくても済む街に絶対変えていってやるからよ。だから、お前はもう気負うんじゃねーぞ。怪我までしてお前が一人で頑張る必要なんて何もねーんだから、な?」
そんな桐生さんの優しい言葉に思わずじーん…となって、背の高い彼を見上げたまま動けずにいると、
「良かったね、紅葉…」
元気付けるように圭ちゃんが優しく背中をポンポン…と叩いてくれる。そんな圭ちゃんの向こう側では立花さんも優しい微笑みを浮かべながら頷いてくれていた。
「…はいっ!」
ずっと、嫌いだった『夢遊病』。
何がキッカケで発病したのか。どうして夜な夜な歩き回るようになったのか自分でも分からず、どうすることも出来なかった私の持病。
母や圭ちゃんをはじめ、人に迷惑を掛けるのも嫌だったし、自分の意識とは別の所で勝手に行動する『自分』が何より怖かった。
そんな行動に出てしまう自分自身が何より信じられなかった。
でもそれが、まさかこんな風に思える日が来るなんて…。
立花が笑いながら言った。
「そんなの、そうそういてたまるかっての。…怖えわ」
肩をすくめて見せる桐生にまたも笑いが起こり、今度は紅葉も一緒になって笑ってしまった。
「でも、本当は眠り姫にだって安眠できる世の中の方が断然良いに決まってるよな?」
優しい笑顔を向けられるのと同時に、大きな手が紅葉の頭の上にポン、と落ちてくる。
「…桐生さん」
「お前が暴れなくても済む街に絶対変えていってやるからよ。だから、お前はもう気負うんじゃねーぞ。怪我までしてお前が一人で頑張る必要なんて何もねーんだから、な?」
そんな桐生さんの優しい言葉に思わずじーん…となって、背の高い彼を見上げたまま動けずにいると、
「良かったね、紅葉…」
元気付けるように圭ちゃんが優しく背中をポンポン…と叩いてくれる。そんな圭ちゃんの向こう側では立花さんも優しい微笑みを浮かべながら頷いてくれていた。
「…はいっ!」
ずっと、嫌いだった『夢遊病』。
何がキッカケで発病したのか。どうして夜な夜な歩き回るようになったのか自分でも分からず、どうすることも出来なかった私の持病。
母や圭ちゃんをはじめ、人に迷惑を掛けるのも嫌だったし、自分の意識とは別の所で勝手に行動する『自分』が何より怖かった。
そんな行動に出てしまう自分自身が何より信じられなかった。
でもそれが、まさかこんな風に思える日が来るなんて…。