眠り姫は夜を彷徨う
(そもそも何で駅前にだなんて…)
そこまで足を運ぶ理由が、どう考えても見つからなかった。
自分は普段から、あまり駅前まで足を運ぶことがない。
よく母親に頼まれて買い物へ出掛けることがあるのだが、駅前の商店街まで足を伸ばさずとも近くにスーパーがあるので、そこで事足りてしまう。
ましてや電車に乗って何処かへ行くということは本当に稀で。
それなりにメインの大通りは知っているが、少し横道に入れば知らない所ばかりなのだ。
そんな慣れてもいない場所を眠りながら歩いているなんて、ちょっと客観的に考えてみても普通じゃ有り得ない。
(我ながら厄介な症状だよね…)
思わず途方に暮れるように空を仰ぎ見た。
綺麗な抜けるような青空に遠く僅かに白い雲が浮かんでいるだけで快晴と言っても良い程の天気だった。
斜め上から降り注ぐ眩しい朝日が何処か疲れた身体にエネルギーを与えてくれているような感じがして、紅葉は不意に足を止めると、それらを吸収するようにひとつ大きく深呼吸をする。
その時、横を抜いて歩いて行った同じ制服を着た二人組の会話が耳に入って来た。
「…ホントにたった一人でだぜッ。マジで凄かったんだって!」
一人の男子生徒が何か興奮気味に話している。
「へぇーっ。やっぱそいつが今までの奴らもやっつけてたんかな?巷では『掃除屋』とかって呼ばれてるらしいじゃん?」
「ああ。絶対昨日の奴に間違いねぇよッ。あんなスゲー光景は見たことねーもん」
そこまで足を運ぶ理由が、どう考えても見つからなかった。
自分は普段から、あまり駅前まで足を運ぶことがない。
よく母親に頼まれて買い物へ出掛けることがあるのだが、駅前の商店街まで足を伸ばさずとも近くにスーパーがあるので、そこで事足りてしまう。
ましてや電車に乗って何処かへ行くということは本当に稀で。
それなりにメインの大通りは知っているが、少し横道に入れば知らない所ばかりなのだ。
そんな慣れてもいない場所を眠りながら歩いているなんて、ちょっと客観的に考えてみても普通じゃ有り得ない。
(我ながら厄介な症状だよね…)
思わず途方に暮れるように空を仰ぎ見た。
綺麗な抜けるような青空に遠く僅かに白い雲が浮かんでいるだけで快晴と言っても良い程の天気だった。
斜め上から降り注ぐ眩しい朝日が何処か疲れた身体にエネルギーを与えてくれているような感じがして、紅葉は不意に足を止めると、それらを吸収するようにひとつ大きく深呼吸をする。
その時、横を抜いて歩いて行った同じ制服を着た二人組の会話が耳に入って来た。
「…ホントにたった一人でだぜッ。マジで凄かったんだって!」
一人の男子生徒が何か興奮気味に話している。
「へぇーっ。やっぱそいつが今までの奴らもやっつけてたんかな?巷では『掃除屋』とかって呼ばれてるらしいじゃん?」
「ああ。絶対昨日の奴に間違いねぇよッ。あんなスゲー光景は見たことねーもん」