眠り姫は夜を彷徨う
(そんな人がいるんだ…)


街にはびこる悪を殲滅する『掃除屋』と呼ばれる人物。

質の悪いグループ相手に、たった一人で立ち向かっているだなんて正直驚きだけれど。


(でも、なんだろう…。すごく共感出来る…)


一人では何も出来ない癖に集団になると妙に強気で、悪いことや人に迷惑を掛けることに何の躊躇もなく逆に愉悦に浸っているような人たち。

そういう人たちは、ハッキリ言って嫌いだ。

そういう輩は決まって、まるでその行いが格好良いとでも思っているのか、わざと表立って自分たちの存在を誇示しようとする。

正直、そんな人たちとはどんな関わりさえも持ちたくないというのが本音だ。

でも、その反面。

居なくなればいいと。この手で消し去れるものなら全て殲滅してしまいたいとさえ思う激しい感情が己の中にあることを自分は知っている。

そこには過去の出来事が尾を引いてることは明らかなのだけれど。

父の命を奪った事故の経緯が…。


(お父さん…)


第三者の手によって事故に追いやられたことは明白なのに、結局犯人逮捕には結びつかなかった悔しい過去。

どんなに酷い悪党でも、必ずしも正義の鉄槌が彼らに下される訳ではないのだという苦い現実を知った。


(でも…。この気持ちは、ただの復讐心…なのかな…)


少なくとも『正義感』なんかではないことくらい解っている。

力に力で返せば、それは彼らと何ら変わりないのかも知れない。

けれど…。
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