眠り姫は夜を彷徨う
国の治安を守る警察でさえ彼らに手を焼き、抑止することが出来ず、法的に罰することが出来ないというのなら、そういうやり方も在りだと思うのだ。


(これって、私…。ちょっと危険思考かな…)


思っているだけで自分に何が出来る訳でもないのだけれど。

それでも…。

もしも自分にも、そんな圧倒的な力や行動力があったなら…と、思わずにいられない。


(こんなこと圭ちゃんに話したら、また怒られちゃいそうだな…)


『相手への恨みや復讐なんかに走ったって良いことないよ。紅葉が傷付くだけだ』

あの事故の後、気持ちが昂って相手への怒りが抑えられず泣き叫ぶ私に圭ちゃんが言った言葉。

圭ちゃんなら、きっと今でもそんな風に自分を叱ってくれるんだろう。

悪いことをする人たちは当然、許されるべきではないとは思う。

けれど…。


(でも…いい加減、私も成長しなくちゃね)


紅葉は気持ちを切り替えるように頭をぷるぷると軽く振ると学校の門をくぐるのだった。




そんな紅葉の数メートル後方を歩いていた、ある人物の傍へ一人の生徒が足早に歩み寄ると、自然な仕草でひっそりと耳打ちをした。

「昨夜、また出たそうですよ。例の…」

「ああ。掃除屋だろう?聞いた」

つまらなそうに前を向いたまま男は応える。

「今回は目撃者が多数いるそうですよ。その中にウチの生徒もいるらしいです」

「へえ…」

その人物は、その言葉に僅かに目を見開くと不敵な笑みを浮かべた。

「そんじゃあ早速、情報収集しねぇとな」

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