眠り姫は夜を彷徨う
だが、次の瞬間。
(…えっ?)
桐生は走っていた足を止めた。惰性で勢いよく数歩進んだところで立ち止まる。
当たった、と思った。
決して当てたかった訳では勿論ないが、どう見ても確実に当たってしまうタイミングだった筈だ。
だが「避けろっ!」と叫んだ瞬間、その少女の身体が不意に沈み込んだ…ように見えた。正確には屈み込むような形で上手くボールを避けたのだが、あまりにも早いその動きに桐生は我が目を疑った。
まるで後ろに目が付いているかのように。
いや…。見えていたってあのタイミングで避けるのは難しいハズだ。
ボールは奥の柱へと勢いよくぶつかると、大きな金属音を立てて跳ね返り、何度かバウンドして桐生の目の前まで転がって止まった。
「………」
桐生は戻ってきたそのボールを呆然と見つめる。
再び渡り廊下の方へと視線を向けたが、例の女子生徒はフラフラと特別棟の校舎へと入って行ってしまったところだった。
(単なる偶然…か?)
それにしては絶妙なタイミングだった。
何より、その早い動きに驚きを隠せない。
「どしたーっ?桐生ーっ?」
その時、後方から自分を呼ぶ声が聞こえてきた。
皆がボールを待っていることを思い出すと、
「ああ、何でもないっ!」
桐生は声を張り上げてそれに応え、身体の向きを変えて皆のいる方へとボールを思いきり蹴り返した。
それがうまい具合にセンタリングとなり、サッカーの得意なクラスメイトが上手くタイミングを合わせてノートラップシュートを決めた。
「おおっナイスシュート!」
「ナイスセンタリング!桐生っ!」
親指を立てて互いに称賛し合う。
(…えっ?)
桐生は走っていた足を止めた。惰性で勢いよく数歩進んだところで立ち止まる。
当たった、と思った。
決して当てたかった訳では勿論ないが、どう見ても確実に当たってしまうタイミングだった筈だ。
だが「避けろっ!」と叫んだ瞬間、その少女の身体が不意に沈み込んだ…ように見えた。正確には屈み込むような形で上手くボールを避けたのだが、あまりにも早いその動きに桐生は我が目を疑った。
まるで後ろに目が付いているかのように。
いや…。見えていたってあのタイミングで避けるのは難しいハズだ。
ボールは奥の柱へと勢いよくぶつかると、大きな金属音を立てて跳ね返り、何度かバウンドして桐生の目の前まで転がって止まった。
「………」
桐生は戻ってきたそのボールを呆然と見つめる。
再び渡り廊下の方へと視線を向けたが、例の女子生徒はフラフラと特別棟の校舎へと入って行ってしまったところだった。
(単なる偶然…か?)
それにしては絶妙なタイミングだった。
何より、その早い動きに驚きを隠せない。
「どしたーっ?桐生ーっ?」
その時、後方から自分を呼ぶ声が聞こえてきた。
皆がボールを待っていることを思い出すと、
「ああ、何でもないっ!」
桐生は声を張り上げてそれに応え、身体の向きを変えて皆のいる方へとボールを思いきり蹴り返した。
それがうまい具合にセンタリングとなり、サッカーの得意なクラスメイトが上手くタイミングを合わせてノートラップシュートを決めた。
「おおっナイスシュート!」
「ナイスセンタリング!桐生っ!」
親指を立てて互いに称賛し合う。