眠り姫は夜を彷徨う
「紅葉的には本当にそれでいいワケ?」

「良いも何も…。実際、そうなんだし…」

それ以上でも、それ以下でもない関係なのだから他に言いようがないと思う。

でも、タカちゃんは納得していない様子で僅かに口を尖らせた。

「ふーん。勿体ないねぇ。…知ってる?本宮くんって結構モテるんだよー」

「うん。それは知ってるよ」

痛い程に。実際、中学時代痛い目みたし。

(圭ちゃんは優しいから…。モテるの当たり前だよね)

むしろ、そこは幼馴染として鼻が高いくらいだ。自分は保護者でも何でもないけれど、圭ちゃんの良い所を人に認めて貰えるのは素直に嬉しい。

「何かね、最近やたら本宮くんにモーション掛けてるコがいるらしいよ」

「モーション…」

「そ。もし、これで本宮くんに彼女が出来ちゃったら、もういつもみたいに一緒に学校来れなくなっちゃうかもね。それでも紅葉はいいの?」

「ん。それは…仕方ないんじゃないかな」

「もみじ…」

どうやらタカちゃんは心配してくれているようだ。私の微妙な気持ちを察してくれてるのかも知れない。

圭ちゃんと一緒の時間は大切だし、なくなっちゃうのは寂しい。でも…。

(自分でもよく分からないんだ…)

「だって私たち、別に一緒に学校行こうって出て来てる訳じゃないんだよ?」

「えっ?そうなの?それは初耳」

そう。そんな話したことなんかない。

(私が単に、圭ちゃんの家を出る時間を狙ってるだけだし)

「うーん…。まぁ、その自然な距離感がまた良いのかもね。でもさ、紅葉気を付けた方が良いよ。ちょっとイヤな話も聞くからさ」

「嫌な話?」
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