眠り姫は夜を彷徨う
(今日こそは痛い目みせてやらないと気が済まないんだからっ)

少女は頭の中でシミュレーションを開始する。

今日の二校時目の体育は隣のクラスの女子との合同授業だ。その為、あの女と一緒になる唯一の授業なのである。

(何とかして皆の前で恥かかせること出来ないかしら)

実を言うと、今までにもあの女に色々と仕掛けたことがあった。勿論、傍から見ても意図的であるとは分からない程度に…ではあるが。

(でも、ことごとく今まで失敗してんのよね。運が良いっていうか…。何にしても生意気なこと、この上ないわ)


真面目を絵に描いたような地味な容姿。

(センスも何もあったもんじゃない。いまどき、あんなダサすぎなJKいないっつーの。この学校の恥よっ!恥っ!)

その典型の見た目から、運動神経もろくにないのだろうと判断していたら見事に出ばなををくじかれた。

50メートル走のタイム取りで隣のコースになったので上手い具合に妨害するか、スタート時に足でも掛けてやろうかと思っていたのだが、いざスタートしてみれば…。

あの女は、そのどんくさそうな見た目とは裏腹に、超綺麗なスタートダッシュで気が付いたら自分よりはるかに前を走り抜けていた。

自分だって足が遅い訳ではない。むしろ平均より少し早い位だ。なので意地でも追いつこうとするが、その距離は離されるばかりで。

(生意気だわっ!生意気!!)

それ以外にも体育館でバスケのプレイ中、コート外で次の試合待ちをしていたあの女の後頭部を狙って、仲間へのパスがうっかり失敗したかのようにボールをはじいたこともあった。
< 47 / 186 >

この作品をシェア

pagetop