眠り姫は夜を彷徨う
本当に勿体ないとしか言いようがない。

(まぁ、それがまた面白いってのもあるんだけど…)

前に彼女に普通に声を掛けたら、共に歩いていた後輩の立花がぎょっとした様子を見せていたのを思い出す。


「京介さん、あの子と知り合いなんですか?」

「あ?まぁ顔見知りっつーか。ちょっとした縁で知り合ってな」

そう適当に答えると、立花は尚も驚いたような表情を見せて呟いた。

「意外だ…。彼女、一年生ですよね?」

「そうだが…。何だよ、立花。オレが下級生に挨拶しちゃ悪いってのか?」

何となく立花の言わんとするところを理解しつつもワザと突っ込みを入れてみる。すると、立花は慌てて両手をひらひらと横に振って否定を口にした。

「いや…いやいや、そういう訳じゃないですけどっ」

「じゃあ何だよ?」

「あー…その、こんなこと言っちゃうと失礼かもしれませんけど…。その、京介さんがああいうタイプのコとお知り合いなのが違和感あるというか何というか…」

その言い草に思わずプッ…と噴出した。

「違和感な」

「すみませんっ。でも…京介さん、普段からああいう如何(いか)にも真面目なタイプのコ、敬遠しがちじゃないですか?苦手っていうか…。自分からは絶対関わらないでしょう。悪く言えば視界にも入れずにスルーしちゃう感じで」

その散々な言われようにオレは声を上げて笑った。

「京介さん…」

「はははっ。よく見てんだなァ、お前」


確かに普通なら関わり合いたくもない苦手なタイプだ。言っちゃ悪いが異性としての興味も何も湧かない。それだけは断言出来る。

(でも、あいつはなぁ…)
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